エニアグラムの“鉛の法則”を紹介します。
これは簡単に言えば、“メンタル不調時に見られる性格タイプ別の攻撃パターン”です。
これを知ると、自分の精神的健康度の悪化に気付けたり、人の性格タイプを判断するのに役立ちますよ!
では、9タイプ別それぞれ解説していきましょう!
※自分の性格タイプが判明していない方は、コチラを参考にどうぞ。
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エニアグラムの“鉛の法則”とは?
エニアグラムには、“鉛の法則”と呼ばれるものが存在します。
これは、健全度が“不健全”に達する手前(レベル6~7)で生じる各性格タイプ特有の“攻撃的態度”で、各性格タイプが「自分がしてほしくないことを、人にする」という特徴があります。
(※「エニアグラムの“健全度”って何?」という方はこちらをどうぞ。
>>エニアグラムの健全度(健全・通常・不健全)とは?)
様々な宗教で共通する“黄金律(Golden Rule)”が「人からしてもらいたいと思うことを人にせよ」という教えなのに対して、その対極にあることから、“鉛の法則(Leaden Rule)”と呼ばれています。
では、なぜそんなことをしてしまうかというと…、
健全度が下がってしまった時には、自分を守るために「人の状態を下げれば、相対的に自分の状態が上がる(気がする)」と発想してしまうわけですね。
(もう、発想自体はすでに“不健全”ですが…。)
ただ、“鉛の法則”は、不健全に落ちるのを防ぐ“ストッパー”の役割があります。
(だから、傍から見れば迷惑な反応ではありますが、やっている当人にとっては意味ある行為だということです。)
また、自分を守るための反応なので、“悪意”よりも“必死さ”からくる行為だということもポイントです。
つまり、知らぬ内に人を傷付け(嫌われ、恐れられ)、しかも自分で気付いて止めることは難しい特徴だと言えます。
「じゃあ、“不健全”の直前まで落ちないなら、知らなくて良い話?」
というと、そんなことはありません。
もし、あなたやあなたの周りの人が“不健全”手前の状態ではなかったとしても、“鉛の法則”を知っておくことには大きな意味があります。
なぜなら、性格タイプ別の“人を攻撃する際の特徴的パターン”が分かることで、次のようなメリットがあるからです。
- 自分が(無自覚に)健全度が低下したことに気付けるようになる。
- 自分が過去に悪態をついてしまって、人を傷付けたり失敗した原因が分かる。(反省し、自分を許し、改善に役立てられる。)
- 態度の悪い人を見ても焦らず、「この人は健全度が低いのかな?」と冷静に見られるようになる。
- 他者の、ふとした時に見える悪癖から、その人のタイプを診断できるようになる。 …など。
というわけで、各性格タイプの“鉛の法則”を見てみましょう!
エニアグラムの“鉛の法則” 性格タイプ別9パターン一覧!
【各性格タイプ別の“鉛の法則”】
- エニアグラムタイプ1:自分が何らかの形で、よこしまで、堕落し、欠陥があることを恐れるため、タイプ1は他者の、よこしまで、堕落し、欠陥があることを指摘する
- エニアグラムタイプ2:自分が求められず、愛されていないことを恐れるため、タイプ2は人に、愛情や寛大さ、関心を受けるに値しないと感じさせる
- エニアグラムタイプ3:自分に価値がなく、有用でないことを恐れるため、タイプ3は、横柄に扱ったり、軽蔑することで無価値だと思わせる
- エニアグラムタイプ4:自分にアイデンティティや個人的存在意義がないことを恐れるため、タイプ4は、人が取るに足らず、価値や存在意義がないかのように、軽蔑的に扱う
- エニアグラムタイプ5:自分が無力で、役に立たず、無能であることを恐れるため、タイプ5は人に、無力で、無能で、愚かで、役に立たないと感じさせる
- エニアグラムタイプ6:自分が支えや導きをもたないことを恐れるため、タイプ6は人を支えるシステムを揺るがせ、何らかの方法で孤立させようとする
- エニアグラムタイプ7:何らかの痛みや欠乏に陥ることを恐れるため、タイプ7は、人に痛みを引き起こし、さまざまな方法で欠乏感を味わわせる
- エニアグラムタイプ8:人に傷つけられ、コントロールすることを恐れるため、タイプ8は、威嚇することで、傷つき、コントロールされると人に感じさせる
- エニアグラムタイプ9:人とのつながりの損失に苦しむことを恐れるため、タイプ9は、さまざまな方法で「関心を示さなくなる」ことにより、自分とのつながりを失ったと人に感じさせる
(リソ&ハドソン. エニアグラム あなたを知る9つのタイプ【基礎編】)
面白い知見ですよね!
でもこれだけだと、「大まかなことは分かったけど、具体的なイメージがわかない…」という方もいるんじゃないでしょうか?
確かに、少し説明の抽象度が高いですよね…。
というわけで、少し補足をしていきたいと思います。
ただ、“鉛の法則”については、具体的に深堀りしている参考文献って中々ないんですよね…。
そこで、“鉛の法則”に関係する次のポイントを踏まえて整理しました。
- 健全度がレベル6の時の、各性格タイプの特徴を考慮。
- 「自分がされたくないことをする」点を踏まえ、“各性格タイプが嫌がること”を参照。
- 「相手を下げれば自分が上がる」という誤った信念に基づき、“各性格タイプそれぞれの価値観に合わせたマウント”に繋がることを想定。
というわけで、それぞれ詳しく説明していきましょう!
エニアグラムタイプ1の鉛の法則
タイプ1は、「自分はよこしまな存在なのではないか」ということを恐れます。
(“よこしま”っていうのは、“自分の身勝手さを優先して不正をする”ということですね。)
だから普段のタイプ1の特徴的態度としては、“理想を掲げ、キチンと取り組んで、完璧さを感じようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ1の“鉛の法則”としては、人の欠点を指摘します。
つまり、相手の粗探しをして咎めるわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)重箱の隅をつつくような指摘から始まって、相手の落ち度を推測して(決めつけて)長々と説教する。
●具体例2)小さい問題に対して過剰な心配性を発揮して、大きな問題として扱って人を責め立てる。
それによって、「相手と比べて、自分は“正しい”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ1の“鉛の法則”は、正義をかざして私情で批判するので、質(たち)の悪さがありますね。しかも、その“正義と私情の混同”を指摘すると、さらに怒らせる“地雷”になっているという不条理構造…。
また、タイプ1は「怒ることは正しくない」という感覚があって、自分を抑制するせいで、怒りが小出しになる結果、話(説教)が長くなるのも特徴です。
エニアグラムタイプ2の鉛の法則
タイプ2は、「自分は愛されないのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ2の特徴的態度としては、“人に親切にし、心を通わせ、人から愛されていることを感じようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ2の“鉛の法則”としては、人から“愛”を取り上げます。
つまり、相手の好意を否定したり、嫌われていると思わせようとするわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)人の親切な行為に対して「お節介だ、余計なことするな」と突き放す。
●具体例2)嫌いな人(傍からは衝突してないように見える人)を、裏でボロクソに言ったりする。(笑顔で)
それによって、「相手と比べて、自分は“愛される”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ2は、他者を“好き嫌い”で見がちなので、“鉛の法則”時は「嫌い」感が出ますね!さらに、健全度が下がるとストレス(分裂)方向のタイプ8が顔を出すので、普段の“気遣いのオブラート”がなくなり、割とストレートな攻撃姿勢になってくるのも特徴です…。
エニアグラムタイプ3の鉛の法則
タイプ3は、「自分には価値がないのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ3の特徴的態度としては、“成果を上げて人からの評価を高め、自分の価値を認識しようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ3の“鉛の法則”としては、人の価値を否認します。
つまり、相手を認めず評価を下げようとするわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)人の話や持ち物に対し「大したことない」と見下してくる。
●具体例2)人の成果に対して「ズルだ、インチキだ」と言いがかりを付けたりする。
それによって、「相手と比べて、自分は“優れた”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ3の“鉛の法則”時は、“飢えたマウンティングハンター”という感じですかね。小さな優越感でも必死に狩りたがる、っていう…。
この状態のタイプ3と接するとき、イラっとして張り合ってしまうと相手の競争心に火を付けてマウントを増長させてしまうかもしれません。
エニアグラムタイプ4の鉛の法則
タイプ4は、「自分には存在意義(アイデンティティ)がないのではないか」ということを恐れます。
(ここで言う“存在意義(アイデンティティ)”とは、“自分は唯一無二の存在だという認識”です。)
だから普段のタイプ4の特徴的態度としては、“独特の表現を通じて、自分らしさを感じようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ4の“鉛の法則”としては、人の存在意義を無下にします。
つまり、相手の独自性を示すもの(センスやアイデア、気持ちの表現など)を否定するわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)人の個性が表れるもの(服装や髪型、持ち物など)に対して「センスない」と否定する。
●具体例2)人のアイデアや提案や作品を、興味のない態度で軽くあしらう。
それによって、「相手と比べて、自分は“特別な存在”の側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ4の“鉛の法則”時の印象は、拗ねている感じでしょうか。(ネガティブな言葉を並べて「イヤだイヤだ」と言うような。)
タイプ4の悪癖である、“否定から入る態度(周りを否定することで「自分は周りと違う」という感覚を得る)”が顕著化するのも、この状態の特徴かもしれません。
エニアグラムタイプ5の鉛の法則
タイプ5は、「自分は無能なのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ5の特徴的態度としては、“知識を整理し、深めて、専門性を築くことで、有能感を得ようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ5の“鉛の法則”としては、人の思考の出来を否定します。
つまり、相手の考えや知識を劣ったものとして扱う、つまり“バカ”にするわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)「頭が悪いから話しても無駄」と考えて、話さなくなる。
●具体例2)人の主張に対し、揚げ足を取ったり無理に矛盾点を突いて論破する。
それによって、「相手と比べて、自分は“頭が良い”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ5の“鉛の法則”発動時は、「自分は、相手をバカにしたいわけではないんだけど、相手がバカなんだから仕方なく言ってるんだよ」感を出す印象ですね。
ただ、“鉛の法則”の際には、(無意識の場合も含めて)実際はバカにしたいだけなので、議論しても建設的な出口はないでしょう…。
エニアグラムタイプ6の鉛の法則
タイプ6は、「自分には何の支えもないのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ6の特徴的態度としては、“組織の中で役割を担い、仲間からの信頼を得て、安心感を確保しようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ6の“鉛の法則”としては、他者の社会的信頼を揺らがせます。
つまり、相手を仲間内から排除しようとするわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)陰口を言って、組織内でのポジションを危うくさせる。
●具体例2)権力のある人に悪い噂を吹き込んで信用を貶める。
それによって、「相手と比べて、自分は“安心できる”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ6の“鉛の法則”は、“安全圏から石を投げる”感じですかね。で、その“安全圏”を作るために、同じく不満を持っている人を集めて、その中に身を隠すイメージです。
“ネットで匿名で悪口を書く”のを、実生活でやってる版とも言えます。(…まぁ、実生活でやってたら周りにもバレますけどね。)
エニアグラムタイプ7の鉛の法則
タイプ7は、「自分はツラさから逃げられないのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ7の特徴的態度としては、“スピーディに動き回り、楽しみことで満たされようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ7の“鉛の法則”としては、他者の快楽を妨害します。
つまり、相手に対して、楽しい気分ではいられなくするわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)人が楽しそうに語る話やアイデアに「つまらない」と言って否定する。
●具体例2)面倒で、退屈で、責任のある仕事を人に押し付ける(自由を奪う)。
それによって、「相手と比べて、自分は“楽しめる”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
“鉛の法則”発動中のタイプ7は、目が座ってスンとしている印象ですね!
通常の段階の時は、賑やかで笑顔な分、結構分かりやすいと思います。
エニアグラムタイプ8の鉛の法則
タイプ8は、「自分は人から支配されるのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ8の特徴的態度としては、“物事に立ち向かっていき、強さを誇示しようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ8の“鉛の法則”としては、他者の自立を脅かします。
つまり、相手を負かして従わせるわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)怒鳴るなどの威圧的な態度で追い込む(脅す)。
●具体例2)命令したり罰したりする(支配する)。
それによって、「相手と比べて、自分は“勝つ”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ8の“鉛の法則”状態は一番分かりやすいですね。明らかに怒っているので。
もしこの状態の人が周りにいたら、精神も体力も削られますよね…。
エニアグラムタイプ9の鉛の法則
タイプ9は、「人との繋がりを持てないのではないか」ということを恐れます。
だから普段のタイプ9の特徴的態度としては、“誰も否定もせず、輪に溶け込み、一体感を堪能しようとする”わけです。
それを踏まえてタイプ9の“鉛の法則”としては、他者の“自分との繋がり”を喪失させます。
つまり、自分と相手との接触を断つわけです。
例えば、次のようなことがあります。
●具体例1)相手と一緒にいることを避ける。
●具体例2)相手の話に反応しなくなる。
それによって、「相手と比べて、自分は“繋がっている”側にいる」という感覚を得ようとするわけです。
タイプ9の“鉛の法則”の方向性は、タイプ6と混同してしまう部分もあるかもしれません。
ただ、その違いを端的に言うなら、「タイプ6は裏で疎外工作をするような陰険さがある」、「タイプ9はシャッターを閉じるように取りつく島がない」、という感じしょうか。
まぁ、どっちも困りますよね…。
エニアグラムの“鉛の法則”は誰にでも起きる?発動条件は?
ちなみに…、
“鉛の法則”は、いつ、どんな人に、どんな条件で起きると思いますか?
(つまり、「この現象は、どれだけレアなことなのか?」ということです。)
結論、「多くの人で、割と普通に起きる。」と言えます。
その理由は3つあります。
- ①鉛の法則は不健全の手前(レベル6)で起きる。
- ②大半の人の健全度は“通常”段階(レベル4~6)に位置する。
- ③9段階の健全度は、1日の中で±2~3レベルほどの変化幅がある。(※重心位置は変わらないが、一時的な上下はある。)
よって、“鉛の法則”は、“あなた”にも、そして“あなたが普段問題なく親しくしている周りの人”にも、普通に起こる可能性のあることだと言えます。
(多くの人にとって、決して他人事ではないわけです。)
だから、
「あれ、何か今、私、嫌な奴になってない…?」
「え、この人ってこんな嫌な性格だったっけ…?」
と思う瞬間があったら、“鉛の法則”を当てはめてみて下さい。
それは、何かしらのストレスがあって、でも健全度が下がることには抵抗したくて、必死にもがいているだけなのかもしれません。
…そんな風に、“鉛の法則”の知識を、自己肯定や他者への温かい目に繋げられると、有意義なんじゃないかなと個人的には思っています。
鉛の法則を知っていると、人からの攻撃反応に、距離を置いて対処できるようになるという意味でも知っとく価値は大きいと思いますよ!
少なくとも、「思いがけない攻撃や拒絶に会っても、自分なら対処できる!」と思えていると、安心できるので!
(※各性格タイプの“鉛の法則”発同時の人への対処法というのもあるので、機会があればブログの方でも書きたいと思います。)